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~数十年後~

 

 「ユーリカ先生!原稿、取りに来ましたよ!」

 

 いつもの様に、強くノックされる部屋の扉。仕方なく対応に出ると、何人目かの担当君の姿があった。

 

 「何よ……」

 「何よ、じゃないですよ!原稿、今日までなんですけど!!」

 「うるさいわねぇ……六〇代の婆さんへの気遣いってものを知らないのかしら……」

 

 原稿は出来ていないと、きっぱりと告げると担当君は悲鳴を上げた。

 

 「まったく……今日は、新しい担当さんが来るって言うのに……遅刻しちゃって」

 「新しい担当?」

 

 その時、ちょうど廊下から慌ただしい足音が聞こえ、ついで扉が開く。

 

 「遅れました!本日付でユーリカ先生を担当させていただく、アレンと言います!」

 「まったく、初日から遅刻かぁ?お前なぁ」

 

 担当君はそうボヤいていたが、私は彼から目を離すことができなかった。私の視線に気が付いた彼は、私と目が合うとニヤリと笑う。その笑顔が、懐かしかった。

 

 「ずいぶん待たせちゃったな……やっと見付けた、ユーリカ」

 

 

 

 

 

 

 

それじゃあまた、会いましょう。   終

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